(再送)田中実さん・金田龍光さんについて人権救済申立【調査会NEWS3817】(R6.4.24)

※先日も同様の間違いをやりましたが号数と発行日が前のものでした。再送しますので先ほど送ったものは破棄願います。ご迷惑をおかけしてすみません。

【調査会NEWS3817】(R6.4.24)

※このメールには返信しないで下さい。お問い合わせ等は代表荒木のアドレスkumoha551●mac.com(●を半角の@に変える)までお願いします。

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<田中実さん・金田龍光さんについて人権救済申立>

   荒木和博

 政府認定拉致被害者田中実さん・特定失踪者金田龍光さんについて調査会の関係役員連名で本日4月24日以下の通り日本弁護士連合会に対し人権救済申立を行いました。申立の後、竹下珠路特定失踪者家族会事務局長(調査会副代表)・岡田和典常任顧問・川人博弁護士(調査会幹事)と私で記者会見兼YouTubeライブを実施しました。この模様はいつでも見ることができますのでぜひご覧ください。

https://youtube.com/live/Sicep7bZEKg?feature=share

(申立文)

日本弁護士連合会人権擁護委員会御中

北朝鮮に拉致された田中実さん・金田龍光さんの人権侵害救済申立書

申立人(五十音順)

現住所 東京都■■■ 

氏名 特定失踪者問題調査会代表  荒木和博

現住所 兵庫県■■■

氏名 特定失踪者問題調査会常任顧問

 岡田和典

現住所 兵庫県■■■

氏名 北朝鮮に拉致された日本人を救出する会兵庫県協議会副代表 特定失踪者問題調査会幹事               島尾百合子

現住所 千葉県■■■

氏名 特定失踪者問題調査会副代表 特定失踪者家族会事務局長         竹下珠路

現住所 東京都■■■

氏名 特定失踪者問題調査会副代表 北朝鮮による拉致被害者家族連絡会前事務局長 増元照明

第2 相手方

 内閣総理大臣 岸田文雄殿

 内閣官房長官兼拉致問題担当大臣 林芳正殿

 外務大臣 上川陽子殿     

第3 申立の趣旨

 申立人による人権救済申立事件(北朝鮮による拉致事件)につき、国民及び在日朝鮮人(特別永住者)に対する重大な人権侵害であり、かつ国家主権の侵害であることに鑑み、政府に対し、緊急に下記の措置を講じるよう要望書を提出すること。

1. 外務省は、北朝鮮との外交交渉において北朝鮮からもたらされた田中実さん(以下田中という)・金田龍光さん(以下金田という)に関する情報を直ちに開示し、情報に基づき、日本政府とともに両名の速やかな帰国を企図すること。

2. 日本政府は直ちに北朝鮮との交渉を再開し、家族・友人との再会を果たすこと。

3. 日本政府は、本件に関し、国連をはじめとする国際機関・関係する国々に両名帰国実現のための協力を求めること。

第4 申立の理由

1 人権救済申立にかかる被害事実

 平成26年5月のストックホルムでの北朝鮮との政府間協議において、北朝鮮は拉致被害者の安否再調査を約束した。後日、田中・金田の両名について「北朝鮮に入国後、ともに北朝鮮で結婚し、現在妻子と元気に平壌で暮らしている」との北朝鮮からの報告があった。同時に、北朝鮮は田中・金田の日本への一時帰国をも提案してきた。

 北朝鮮からの報告・提案は外務省経由で首相官邸に届けられたが、日本政府はこの報告の受け取りを拒否し、現在に至っている。

  

2 関連する事実

(ア)本件申立にかかる田中・金田は同時期に神戸市内の養護施設「■■■」(■■■)で過ごし、昭和43年同時に同園を卒園(田中は高校卒、金田は中学卒で3歳の年齢差あり)した。卒園後も両名間には交流があり、昭和53年から54年にかけては、両名共に中華料理店「来大」(神戸市東灘区北青木2-9-25 現在閉店)で働いていた。

(イ) 金田は養護施設卒園後、印刷工場で短期間働いた後、中華料理店「来大」に勤める。田中は卒園後、住み込みにて事務機販売会社に勤めるが長続きせず、その後パン屋・喫茶店など職を転々とする。昭和53年頃、田中は金田に誘われ、ともに「来大」で働くこととなる。

(ウ)「来大」の店主、韓竜大(故人)は北朝鮮の非公然組織「洛東江」に属し、「洛東江」リーダー曺廷楽と共謀し昭和53年、「オーストリア共和国ウィーンに良い働き口がある」との甘言で田中を誘い出し、ウィーンから北朝鮮に移送した。半年後、ウィーンからの田中名義の国際郵便にて、金田が誘い出され、東京に向かったまま消息を絶った。金田はその後、北朝鮮に入国したものと思われ、現在に至る。

(エ) 申立人の荒木・岡田・島尾・竹下・増元は平成15年に設立された特定失踪者問題調査会にて、拉致被害者及び拉致の可能性を排除できない失踪者について調査・救出活動を続けるメンバーである。

(オ) 申立人の岡田は「救う会兵庫」の代表である長瀬猛氏とともに、平成14年10月4日に韓竜大を、平成16年1月29日に曺廷楽を、国外移送目的略取等の罪名で被告発人として、ともに兵庫県警に告発している。

(カ) 申立人である島尾は「北朝鮮に拉致された日本人を救出する会・兵庫県協議会(以下「救う会兵庫」という)」の副代表である。「救う会兵庫」は月に1度の街頭署名活動、パネル展示会、講演会など、田中・金田を含む拉致被害者救出活動を、20数年にわたり行ってきた。

(キ) 申立人の増元は政府認定拉致被害者増元るみ子の弟である。

(ク) 申立人の竹下は特定失踪者古川了子の姉である。

(ケ)田中は、曺・韓とともに「洛東江」で活動をしてきた張龍雲氏が「文藝春秋」平成9年1月号の紙面にて「洛東江」の内実を暴露したことにより拉致の事実が顕在化した。金田は田中実拉致が大きく報道されることにより、岡田に情報がもたらされ、金田を知る者たちへの調査を経て、北朝鮮に拉致されたとの確信に至ったものである。

(コ)田中は平成17年4月27日に政府により拉致認定されている。金田は民間団体である特定失踪者問題調査会が拉致された可能性が高い者として、また兵庫県警が「拉致の可能性が排除できない事案に係る方々」として広く情報を求め広報されている。

(サ) 金田に対する貴会への人権侵害救済申立は他の特定失踪者15名と共に16年1月29日に行われ、翌平成17年3月29日付で日弁連から総理・外務大臣・警察庁長官に対し全てに拉致の疑いがあるので所要の措置を講ずるよう要請が行われている。今回はそれ以後に行われた日朝の交渉の中で北朝鮮側が田中・金田について明らかにしたにもかかわらず日本政府がその受け入れを拒否し、さらにそれから10年経過しても2名のみならず拉致問題全体に全く動きが見られないため再度の申立に及んだものである。

    

3 人権侵害申立に至った理由

 令和3年8月11日付「朝日新聞」紙上でストックホルム合意当時の拉致問題担当大臣であった古屋圭司衆議院議員が「北朝鮮は非公式協議で、行方不明になった神戸市出身の田中実さんと、知人の金田龍光さんの生存を明かしたとされていますが、日本政府は報告を受け取りませんでした。なぜでしょうか」との問いに対し次のように答えている。

 「報告書を受け取れば北朝鮮のペースになるとの懸念がありました。小泉訪朝で5人を返して、幕引きを図ろうとしたからです。今回もこの2人で、となれば、同じことになると考えるのは当然です。分析結果をつぶさに話すことはできませんが、当時、拉致対策室で、あらゆる手段を通じて情報を取り、客観的に分析しましたから」

 また翌令和4年9月17日には、「朝日新聞デジタル」で、ストックホルム合意当時の外務事務次官であった齊木昭隆氏が「北朝鮮からは、拉致被害者の田中実さんや知人の金田竜光さんの生存情報が提供されたと報じられています」との質問に対し次のように答えている。

 「北朝鮮からの調査報告の中に、そうした情報が入っていたというのは、その通りです。ただ、それ以外に新しい内容がなかったので報告書は受け取りませんでした」

本件に関しては国会でも繰り返し取り上げられてきたが政府は一切の答弁を拒否し以降も何一つとして、両名救出に向けた政策・行動をとろうとしていない。

4 結語

 政府が認定する拉致被害者は17人、警察庁が発表する北朝鮮による拉致の可能性が排除できない事案に係る方々が871人(令和6年3月15日現在)存在する。にも拘らず、帰国した拉致被害者は僅か5人に過ぎない。

 北朝鮮からの、田中・金田両名が妻子と平壌で元気に生活しているとの報告、両名の日本への一時帰国の日本政府への打診は、小泉訪朝時に5人の拉致被害者を北朝鮮が認めた状況と同じといえよう。

 ただ、その後の日本政府の対応は帰国した5人の拉致被害者への対応とは正反対のものであり、結果として残念ながら未だに日本への帰還が果たせず、現在に至っている。

 拒否した理由については「横田めぐみさん、有本恵子さんの情報ならともかく、日本でほとんど身寄りのない二人では政権の支持率を高めることはできないから」とも言われている。もちろん、北朝鮮側は2名の情報を出すにあたってそれを持って拉致問題の終結を求めていることは明らかであり、それを受け入れることができなかったというのは事実であろう。しかし拒否した理由がどのようなものであれ、田中・金田両名を含め、5人の帰国後、未だに誰一人として拉致被害者の帰国が実現していない事実を考える時、その判断が正しかったとは言えないであろう。両名に対しては北朝鮮当局から「日本政府はお前たちを見捨てた」と伝えられている可能性が高く、その絶望感は想像を絶するものがある。

 直ちに政府は、田中・金田両名帰国に向け、あらゆる取組を行わねばならない。日本弁護士連合会として関係各機関への強い要望を伝えていただくよう希望するものである。

第5 添付資料

 1 令和3年8月11日付朝日新聞記事

 2 令和4年9月17日付朝日デジタル記事

 3 三浦小太郎編『よそのくに』(晩聲社)

     令和6年4月24日

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