日本を舞台にした南北の戦い(1)朝鮮戦争に参戦した在日韓国人たち【調査会NEWS3487】(R3.8.30)

【調査会NEWS3487】(R3.8.30) ※このメールには返信しないで下さい。お問い合わせ等は代表荒木のアドレスkumoha551●mac.com(●を半角の@に変える)までお願いします。 ―――――――――――――――――――――― <日本を舞台にした南北の戦い(1)朝鮮戦争に参戦した在日韓国人たち>
特定失踪者問題調査会特別調査班
 今回から6回に分けて、歴史の中に葬られた帰還事業阻止のための韓国工作員派遣について書きます。これも「外事」事件には違いないのですが、韓国が北朝鮮に対抗して行ったことであり、内容から言ってこれまで続けてきた「日本における外事事件の歴史」とは異なるのと、長文であるため別途の連載とする次第です。
 この事件はおそらく多くの方々はご存じないと思いますが、戦後の日本を舞台にこのようなことが行われていたのだと知って戴ければ幸いです。なお、本稿では城内康伸・東京新聞編集委員の著書『「北朝鮮帰還」を阻止せよ 日本に潜入した韓国秘密工作作戦』(新潮社)及び金賛汀氏の『在日義勇兵帰還せず 朝鮮戦争秘史』(岩波書店)や当時の報道記事の一部などを参考にしています。関心を持たれた方はそれらの本をご一読下さい。
 昭和20(1945)年8月15日、終戦を迎えた日本国内には戦前、あるいは戦中に日本に渡航・密航して居住していた朝鮮半島出身者、いわゆる在日コリアンが約190万人から約240万人いたと言われています。当時日本政府の行政機関は空襲や敗戦・占領の影響で機能的に麻痺状態に陥っており、現代に至っても当時の正確な数字は不明のままです。
 この在日コリアンの人々は終戦直後から出身地でもある現在の韓国に帰国を始めました。小型の漁船などを集団でチャーターして韓国に渡る人たちもいました。
 日本政府による在日朝鮮人の集団帰国の公式な始まりは9月からで、福岡県の博多、山口県長門市の仙崎、長崎県の佐世保、北海道の函館、京都の舞鶴、横須賀市の浦賀などの港が主に使われ、現在の韓国・釜山、群山、木浦、仁川などの港に向かいました。この帰国者は終戦の昭和20(1945)年8月15日から翌昭和21(1946)年3月末までの間に公式(日本政府による費用負担)の帰国者が約90万人、自力で船を調達したりして非公式に帰国した方々が約40万人、計約130万人が終戦直後から約7か月の間に現在の韓国に帰国したとされています。
 一方、現在の北朝鮮側では昭和21(1946)年12月19日、「ソ連地区引き揚げに関する米ソ協定」が締結され、この協定で北朝鮮側に帰国する人の条件として「かつて北緯38度以北の朝鮮北部に居住し、かつ同地域で出生した朝鮮人1万名」となっており、北朝鮮側に帰国できる人は限定されていました。昭和21(1946)年3月に日本政府が北朝鮮側への「帰国希望の有無登録」を行った際には帰国希望者は9,701人でしたが、昭和22(1947)年1月末の再調査では帰国希望者の数は1,413人に減少し、実際にこの時期北朝鮮側へ帰国した人は351人にとどまったといいます。
 では終戦後に日本に留まり、「在日コリアン」と呼ばれることになった人々は何故故郷である朝鮮半島に戻らなかったのでしょうか。もちろん個人的には千差万別があって一概には言えませんが、当時GHQ(日本を占領していた連合軍の総司令部)の情報部は帰国しない人々への聞き取り調査の結果を報告書にまとめています。それによると①GHQが定めた1人1,000円の持ち出し制限(後に緩和)があったこと、②日本での生活に融合してしまっていること、③戦時中日本軍の軍属となっていたりして朝鮮半島に戻れば「親日派」として糾弾されかねないこと、④南北に分断された朝鮮半島の状況、などが帰国しない理由として上げられていたようです。帰ってはみたものの現地の状況に失望してまた日本に戻った人もいました。
 朝鮮半島南部では昭和23(1948)年8月15日、大韓民国政府が樹立樹立され李承晩が初代大統領となりました。一方北部でも同9月9日、朝鮮民主主義人民共和国政府が樹立され金正恩の祖父にあたる金日成が首相に就任しました。
 南北それぞれ、米国とソ連の後ろ盾を得ての政府樹立でしたが、当時は北朝鮮の方が経済的に韓国を上回っていました。別に北朝鮮の政策が優れていたからではなく、日本時代の鉱工業インフラが圧倒的に北朝鮮に集中していたためです。日本時代朝鮮半島は「北工南農」と言われ山が多く水力発電に適している上に鉱産資源が豊富な北朝鮮地域に重点的に設備投資が行われていました。
 二つの政府樹立から2年も経たない昭和25(1950)年6月25日、金日成の指令の下、突如北朝鮮軍が38度線を越えて南侵を開始します。朝鮮戦争の開戦です。在韓米軍は前年撤退しており、全く準備のできていなかった韓国軍は防戦すら十分にできない状況で、ソウルはわずか3日で陥落してしまいます。
 このニュースは世界中を飛び回り、韓国系の在日コリアンたちの耳にも祖国の窮状が聞こえてきました。そこで「祖国を救いたい」と、在日コリアンの中で在日本韓国学生同盟(韓学同)の学生たちを中心に声が上がり、「在日韓僑学徒義勇軍推進委員会」が設置され、京都、大阪の民団本部では緊急対策会議を開催し「義勇兵募集」の決定を行いました。
 そして民団の青年組織・朝鮮建国促進青年同盟(建青)も義勇兵募集に呼応して6月29日には各地の民団本部で「義勇軍受付所」が開設され義勇兵の募集を始め、7月2日には全国民団会長会議が緊急で開かれ「義勇兵募集」が正式に中央本部決定とされます。(続く)
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